「カツオです。姉さんの天空の剣による重斬撃は先生が現金一括払いで買った魔法の鎧を斬砕し、同時に先生の心の拠り所まで破壊しようとしていたのでした…」
「説明をしろッ!説明をッ!どうして専業主婦に過ぎないお前が天空の剣を振り回せるんだ!?なぜここまでの斬撃を実現できる!?」
「それが人にモノを頼む態度なのかしら…?学校という閉じられた狭い社会の中で、子供相手に威張り続けてきた世間知らずの中年は頭の下げ方一つ知らないでッ!」
「くっ……、大の男である私が、ベテラン教員である私が、社会人のなり損ないだとでもいうのか……!だが、今は専業のケツの穴を舐めることになっても、天空の剣の秘密を知りたい……!おっ……お願いします、サザエさん……!」
「ああっ、先生が頭頂部が寂しくなりつつある頭を下げた!家庭訪問でちゃっかり晩飯までご馳走になっても当たり前の顔してた先生が!」
「いいわ……、私は約束を守る女だから教えてあげる。天空の剣の強さの秘密は特殊選血天空魔導金属オリハルコンにあるわ」
「オリハルコンだって!?歴史の教科書に載ってたけど、神話の時代の伝説のはずじゃ……!」
「それはあくまで表向きの話さ。オリハルコンは天空に実在している金属で、地上では採取も加工も不可能。かつて勇者と呼ばれた者達がこの剣を振るって、戦いが終わった後に封印したようだけど、お義父さんが人造勇者<アーティファクチュアル・ブレイブ>に装備させるために退職金を前借りして探し当てたんだ」
「……私には退職金を前借りするまでの覚悟はなかった……。老後の生活を危険に晒してまで、勇者を作り出すことにこだわっていたのか、磯野波平……!」
「オリハルコンは非常に重く硬い金属なのよ。先生が天空の剣を抜けなかったのは当然だし、この重量と硬度が高い攻撃力を生み出しているの」
「そんなに重いならどうして姉さんは持てるんだ…?それに天空の剣をここに持ってきたのはタマなんだぞ……?」
「……その重さを打ち消す方法がある、ということか…?」
「当たりよ。この重量はセキュリティとしても機能している。選ばれた者以外がこの剣を使えないように…。そしてセキュリティを解くキーとなるのは天空人の血……。血統対滅<ブラッディ・キャンセル>ってわけ。天空人の血を宿す者だけは物理法則を無視してオリハルコンの重さを感じないのよ」
「タマが天空の剣を持ってこられたのは鞘に入れていたからだ。あの鞘には天空人の血がたっぷりと染み込んでる。製造過程を想像したくないが……ある意味、呪いのアイテムさ」
「…でも、姉さんは天空の剣を抜くのに出産レベルの苦労をしてたじゃないか。重さを感じないんじゃ…?」
「私は出来損ないの人造勇者だもの……。血統対滅も不完全な形でしか使えない。だから、かなりの重さを感じてしまうのよ」
「そこを強引に力技で突破するためのバイキルトというわけか。呆れた夫婦だよ、まったく……。そして素直にオリハルコンの情報を喋っているのも、体力を回復する時間稼ぎ、だな。筋力強化身体<バイキルティングボディ>であっても、天空の剣を抜いて、さらに振り回してるのだから、激しく消耗するはず……」
「あら、バレてんの。授業料だと思ってちょうだい」
「私は払うのには慣れていなくてね…!」
次回を待て!