「カツオです。時代錯誤のオッサンの妄想に付き合わされて、人生をメチャクチャにされてしまいました…。お前マジで責任とれや!」
「…ズレてる…ッ!完璧にズレてる…!オッサン特有のズレ……!」
「ズレてる、だと?」
「そうだよ…!先生は勇者を児童会長にでもして『良い子』を量産しようとしてるんだろ…?子供がみんな勇者に憧れてるなんて妄想を前提に…!でも、その前提がもう間違ってるんだ!現代の子供は勇者に興味なんかないんだよ!」
「もし本当に勇者を誕生させることができて、それをマネキンみたいに学校に置いたところで、無名の動画配信者以下の求心力しかないことは必定だわ!」
「先生はノスタルジーとセンチメンタリズムに縛られて、目の前の現実が見えていないでーす!」
「子供が大人にそんな口をきいていいと思ってるのか!何も分かっていない子供が!私がお前達のためにどれだけ心を砕いているか知りもせんで!」
「くそっ!なんで分かり合えないんだよ!」
「分かり合う必要などない!お前たちは10年後、20年後に私の胸の内を、真意を理解できれば、それでいいのだ!今は憎まれていい!私を憎め!」
「結局、自己犠牲に酔ってる人ってワケ!?」
「実際やってることは児童への強制猥褻でーす!」
「僕の身にもなれよ!やっていいことと悪ぃことあんだろ…!」
「どうとでも言え!今は波平にとどめを刺す!ムオオオッッッ……!!」
「な、なんという魔力の高まり、律動…!最上級呪文でワシを殺す気だな…!」
「万物を凍てつかせる輝く王よ…!命を、骸を、魂さえも氷雪に封じる告死鳥よ…!」
「い、いきなりヤバいぐらい寒くなってきたわ…っ!」
「大気が凍てつき始めたでーす!」
「我の求めに応え、永久に溶けること無き冷晶の欠片を、今ここに顕せッ!」
「いっ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だッ!僕にも分かるぐらいデカすぎる魔力じゃんかよ…!もう殺気とか、そういうレベルじゃねぇッ……!とんでもない魔圧…!ううううっダメだっ…吐きそ…ッ」
「これは…残った魔力を全て防御に回しても耐えきれんかッ…!?」
「雲天を貫き、四海を穿ち、大地を撃砕する巨神の氷槍ッ!!マヒャドッッッ!!!」
「ぬッッッ……!!!ぐおおおおおおッ…!!!!!」
「お父さん!頑張ってくれよォ!!」
「磯野波平54歳、今まさに試練の時だわッ!」
「でも無理そうでーす!現実は非情無情でーす!」
「……お父さんにとって試練の時なら、私にとっても試練の時ということでしょうね…」
「かっ、母さん!!」
「磯野フネ…ッ!まだ動けたか…!!」
「夫婦は一蓮托生でしょう…。最期の時まで添い遂げます……!我が身に流れる猛き血よ…、我が身に宿る穢れなき闘志よ…、聖なる守護を成せッ…!マジック…バリアッ……!!」
「こっ、この技は…!母さん…!」
「お父さんが…教えてくれたんですよ……。『不器用なお前に複雑な魔力操作を要求される呪文は無理だから』って…。『その代わりにバカみたいに強い闘気の使い道をワシが考えてやった』って……。プロポーズの…言葉……。婚約指輪代わりに、お父さんが私のために作ってくれた技……」
「見せつけてくれるなよ、磯野夫妻!そんなもので私のマヒャドが止まるわけないんだ!!」
「な…なんて感動的な話なのッ…!尊みがヤバいわ…!私もこんなプロポーズされたい!」
「エモすぎでーす!」
「…………い、いや……プロポーズで指輪も渡さず、なんとかバリヤー?とか…。どういう神経してんだ…。それで喜んでるのも狂ってるし……。終わってんだろ、ウチの両親……」
次回を待て!