「カツオです。天より降る巨大にして鋭利な氷柱に潰されまいと、僕の両親は歯を食いしばって、折れそうな両腕を必死に上げて、夫婦の絆で食い止めているのです。その姿は、ささやかな幸せや人並みの暮らしを守るために、辛苦労苦に耐え、下げたくない頭を下げ、言いたいことも言えずにいる…、そんな大人達と重なる気がして…。ここまでしなければ、当たり前の生活一つ守れないのです。あぁ、身過ぎ世過ぎの是非もなく!」
「僕の両親よ、耐えてくれ!大人の苦労も少しは分かる年齢になってきて、こういう言い方がずるいのは承知だけど、保護者の義務を果たしてくれェ!」
「ぐっ……!がっ………!!ああああああああッッッ!!!!」
「ダメでーす!マジックバリアが貫かれるでーす!」
「己が信念に人生の大半を捧げた単身者の業を見ろ!!既婚者などという俗人に何ができるものかよ!!」
「こ、ここまでかッ…!すまん、母さん……ッ!」
「おっ、お父さんっ…!愛して…いました……!」
「ワシも愛し……ぐわああああああああああああ!!!」
「バリアが完全に破壊されて、マヒャドがお父さんとお母さんを直撃したっ!畜生ッ!結局このザマかよ!親なんてアテにもなんにもなりゃしねぇ!」
「ハハハハッ!勝ったぞ!稀代の大魔術師、磯野波平に私は勝った!嫁の手料理などという幸せの象徴を、出来合いの惣菜しか食べてこなかった私が撃砕してやったのだ!」
「お父さんもお母さんもピクリともしないわ!マジで死んだんじゃないの!?私、初潮もまだなのよ!?明日から小児性愛者のオッサン相手にカラダを売って生きていけっていうの!?」
「フフフ……!タダでは逝かせんよ…!波平の最も大切なものを奪った上で首を切り落としてやる!窓際族のお前のクビを、お前の上司はさぞ切りたかっただろう!早期退職に応じるべきだったなぁ!」
「お、お父さんの、最も大切なものって…まさか…!?」
「そうだ!この見苦しく生えてる最後の1本だ!これを情け容赦なく、無慈悲に抜いてやる!」
「そっ、そんな!あんまりだわ!いくらなんでもそこまでの非人道的な殺戮が許されるはずない!人の死は厳かであるべきよ!」
「誰でも尊厳死の権利はあるはずでーす!」
「こんな陰毛みたいなものを後生大事にしてる姿は虫唾が走るんだよ!自分で洗濯機も回せない男の最期だ!失せろッ!!」
次回を待て!