「カツオです。うちの飼い猫が持ってきた剣、その名を聞いた途端、今まで余裕たっぷりだった僕の担任の顔色はみるみるうちに変わっていったのです。なけなしの金をはたいて買った若い女体にすがりついて、必死に腰を振る中高年の射精直前の余裕の無い表情…。精を解き放って気持ちよくなりたい…。だけど、高い金を払ったのだからまだ終わりにしたくない…。次に女に触れるのはいつになるのか……。そういう余裕の無さはいたたまれないのです……」
「なっ!?!?!?いっ、今、なんと言った!?!?」
「天空の剣だと言ったのさ…」
「バカな!バカなバカなバカなバカなバカな!!!世界中の富豪と蒐集家が数百年に渡って探し続けてきたものだぞ!!国家事業として取り組んでいる国だってある!!それをしがない会社員である波平が……!?」
「人造勇者を完成させたところで、剣がなければ勇者とは言えないだろう?お義父さんはそれだけ本気だったってことさ。表沙汰にはできないような事もかなりやったみたいだけどね…」
「そんなこと信じられるものか…!そもそも、その剣が天空の剣であるという証拠がどこにある!?どんな形状をしているのか、それさえ明らかではないんだ!全部、お前達のハッタリだ!」
「……もしかして、それ本気で言ってんの?」
「え」
「天空の剣の形状は有名でーす。少し古い文献をあたれば、簡単に見つかりまーす。複数の文献で形状が一致していることから、WSA<World Sword Association(世界刀剣協会)>でも認められていまーす」
「えっ」
「先生ほど熱心な勇者マニアなら、ひと目見て分かるだろうと思ってたが…。この程度のことも知らずによくデカい口が叩けたものだ…」
「えっえっ」
「もしかして先生って『にわか』なんじゃないのか……?」
「…に、にわか……。こっ、この私が…にわか……だと……!」
「そ。勇者マニアを自称したいだけ、周りから勇者マニアと思われたいってだけなのよ。勇者マニアであることが自身のアイデンティティになってるから、勇者マニアでなくなってしまったら、休日の時間の潰し方一つ分からなくなるんだわ」
「勇者マニアであることに固執するのは、それ以外何も見つけられないからだろう?その年齢になるまで、年相応の時間と金の使い方を見つけることができなかった。だから、惰性的消去法で、子供の頃に好きだった勇者にしがみつき続けているんだ」
「妻子ある社会人として真人間を演じながら、気違いに片足を突っ込んで道を極めんとしたおじいちゃんとは業の深さがまるで違いまーす!勇者マニア道不覚悟でーす!」
「思い出は輝いているかもしれないけど、それが未来の幸せを保証してくれるわけじゃないんだ…!充実した人生を送っているフリをするための道具に使うなら、そんなもの卒業するべきだよ!先生が勇者を捨ててくれれば、僕も性的消費されずに済むんだ!」
次回を待て!